ジェームズ・ロビンソン氏の革命的視点が2024年ノーベル経済学賞に輝く
- 2024.10.18
- ノーベル経済学賞
ジェームズ・ロビンソン氏は2024年10月14日にノーベル経済学賞を受賞した3人のうちの1人です。
受賞理由は「制度がどのように形成され、国家の繁栄や貧困にどのような影響を与えるか」を解明した点にあります。 彼らの研究は、国家間の繁栄の違いが制度の違いに基づいていることを示し、 経済成長を促す「包括的制度」と、阻害する「収奪的制度」に分類することで、制度の長期的影響を分析しました。 また、経済学にとどまらず、政治や社会制度を考慮に入れた革新的な視点も高く評価されています。
ロビンソン氏は、「包括的制度」と「収奪的制度」を通じて、制度の性質が国家の発展にどう影響するかを説明しています。 「包括的制度」は法の支配や自由で平等な経済活動や政治参加を保障し、安定した経済成長をもたらします。 一方、「収奪的制度」は一部のエリート層が国民から富を搾取するもので、経済成長を阻害する傾向があります。 ロビンソン氏は、広範な層による競争と革新を促す「包括的制度」が、経済的繁栄と政治的安定の鍵であると指摘しています。
さらに、彼は植民地支配の形や戦争といった歴史的事象が、現代の制度形成と経済格差にどう影響したかも分析しています。 例えば、アフリカ・中南米などの植民地支配地域では「収奪的制度」が強制され、経済発展が長期的に抑制されています。 一方、北米・オーストラリアなどでは、元々植民地であっても「包括的制度」が早期に導入され、経済成長が持続しやすいことを示しています。 これらの分析により、歴史的な制度の形成過程が現代の国家間の経済格差に影響を与えていることを証明しています。
ロビンソン氏は、法の支配、教育の普及、平等な経済機会の提供が持続的な成長の基盤であり、 「包括的制度」を確立することで多くの市民が経済成長に貢献でき、国家の安定と繁栄がもたらされると述べています。
彼の研究は、経済と政治の関係を深く掘り下げ、国家の発展を長期的に見据えるための理論的枠組みを築きました。 この枠組みは、各国の政策策定や成長戦略に広く影響を与え、持続可能な発展の道筋を示しています。
ジェームズ・ロビンソン氏の経歴
ジェームズ・ロビンソン氏は、1960年2月27日にイギリスのシェフィールドで生まれ、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで経済学の学士号(1982年)、ウォーリック大学で修士号(1986年)、イェール大学で博士号(1993年)を取得しました。
彼は1992年から1995年までメルボルン大学の講師を務め、南カリフォルニア大学とカリフォルニア大学バークレー校で教鞭を執った後、2004年から2015年までハーバード大学の教授として政治学を教えました。2016年からはシカゴ大学ハリス公共政策大学院でリチャード・L・ピアソン世界紛争研究教授を務め、現在もユニバーシティ・プロフェッサーとして活躍しています。
ロビンソン氏は、ダロン・アセモグルとの共著である「国家はなぜ衰退するのか」(2012)や「自由の命運」(2019)など、多数の著書を執筆しています。彼は2004年、ダロン・アセモグル、サイモン・ジョンソンと共にノーベル経済学賞を受賞しています。