自民総裁選:石破茂・元幹事長を新総裁に選出、10月1日召集の臨時国会での首班指名を経て首相就任へ
- 2024.9.28
- 国内・政治平木雅美選挙アナリスト記事
9月12日告示された自民党の総裁選挙は、27日、投開票が行われ、石破茂・元幹事長を新総裁に選出しました。
10月1日に召集される臨時国会で、石破氏は首班指名を受け、内閣総理大臣に就任します。
■投開票の結果
【参考資料1 総裁選開票結果】
【参考資料2 総裁選選挙管理委員会告知】
岸田文雄首相の後任を選ぶ自民党総裁選挙は、高市早苗・経済安全保障相、小林鷹之・前経済安保相、林芳正・内閣官房長官、小泉進次郎・元環境相、上川陽子・外相、加藤勝信・元内閣官房長官、河野太郎・デジタル相、石破茂・元幹事長、茂木敏充・幹事長の、今の仕組みで過去最多となる9人が立候補し、国会議員1人1票の「国会議員票」368票と全国の党員・党友による投票で配分が決まる「党員票」368票のあわせて736票で争われました。
27日午後1時から党本部8階のホールで国会議員による投票が行われ、26日までに党員・党友が郵便などで投票した「党員票」とあわせて開票結果が発表されました。
有効票735票のうち、
◆高市氏が国会議員票72票、党員票109票のあわせて181票、
◆石破氏が国会議員票46票、党員票108票のあわせて154票、
◆小泉氏が国会議員票75票、党員票61票のあわせて136票、
◆林氏が国会議員票38票、党員票27票のあわせて65票、
◆小林氏が国会議員票41票、党員票19票のあわせて60票、
◆茂木氏が国会議員票34票、党員票13票のあわせて47票、
◆上川氏が国会議員票23票、党員票17票のあわせて40票、
◆河野氏が国会議員票22票、党員票8票のあわせて30票、
◆加藤氏が国会議員票16票、党員票6票のあわせて22票となりました。
9人の候補者いずれも過半数を獲得できず、1位の高市氏と2位の石破氏の上位2人が、
決選投票に進みました。
決選投票は、国会議員1人1票と各都道府県連に1票ずつ割り振られた47票の、あわせて415票で争われました。
その結果、有効票は409票で、◆石破氏が国会議員票189票、都道府県票26票のあわせて215票、◆高市氏が国会議員票173票、都道府県票21票のあわせて194票で、石破氏が高市氏を逆転し、新しい総裁に選出されました。
石破氏の政見、経歴をまとめした。
【参考資料3 石破茂氏の政見 総裁選公報】
■総裁選立候補の決意
石破氏は、8月24日地元の鳥取県八頭町の神社で記者会見を行い、「38年間の政治生活の集大成として、これを最後の戦いとして原点に戻り、全身全霊で支持を求めていく」と述べています。
その上で「党よりも国民一人ひとりを見るのが私の政治生活の原点だ。子どものころ、この神社で夏祭りがあり本当ににぎやかだった。日本は今ほど豊かではなかったが、若い人も、子どもたちも、高齢者も皆、笑顔だった。もう一度にぎやかで皆が笑顔で暮らせる日本を取り戻していく」と述べ、地方の再生に全力を挙げる考えを話しています。
■政治とカネをめぐる問題
石破氏は、「政治不信の中、国民に対して説明責任を果たし、国民が納得するまで総裁として全力を尽くす。国民から信頼される自民党、未来を切りひらく自民党でありたい」と訴えています。
■基本姿勢と経済財政政策
石破氏は、「『すべての人に安心と安全を』と掲げた。災害や人口減少などで大勢が不安の中にいる。今さえよければいいという話ではなく、将来どうなるか、そうならないためにどうするかを示すのが政治の役割だ」と述べています。
その上で、経済対策として「物価高を超える賃金上昇の実現には労働分配率を上げて賃金を上げることが一番即効性がある。みんな苦しんでいるのだから経済対策は秋にもやらな
いといけない」と訴えています。
■社会保障政策、人口減少社会への対応
石破氏は、健康維持のための医療制度を構築し医療費を適正化するとしています。
また、人口減少への対策として「国の政策を根本的に変え若い人が来てくれる地方を考えなければならない。地方に魅力的な仕事がなければだめで、どうしたら農業、漁業、林業、サービス業の生産性を上げ、収入が増えるかは考える余地があり、そこに集中するべきだ」と訴えています。
■外交・安全保障/沖縄の基地負担軽減や産業振興
石破氏は、新たな大統領が日本に防衛上のさらなる負担を求めた場合の対応を問われ「正当性を持つとは思わない。アメリカの戦略を担っているのは日本にあるアメリカ軍基地であり、それを論理的に説明すれば誰が大統領でも日本の主張の正当性は認められる」と述べています。
沖縄の基地負担軽減や産業振興について石破氏は、「日米地位協定の見直しに着手する。どれほど難しいことかは承知しているが運用の改善だけで済むとは思わない。アメリカ軍基地は自衛隊と共同管理にする。日本の責任は重くなるが主権国家としての責任を果たさなければならない」と訴えています。
■憲法改正
石破氏は、「衆参いずれかの議員の4分の1以上から要求があれば臨時国会を開かなければならないが『何日以内』と書いていない。20日以内なら20日以内と書かなければ国民の権利を担保できない」と訴えています。
■選択的夫婦別姓
石破氏は、「選択的に姓を選べることはあるべきだ。男性であれ女性であれ姓が選べないことでつらい思いをし、不利益を受けていることは解消されなければならない」と述べています。
■労働規制改革
石破氏は、「同一労働同一賃金の観点から、非正規はなるべく減らさなければならない。非正規の人にも社会保障が提供される機会を作らなければならず、段階的にやっていきたい」と述べました。
■石破氏の経歴
石破氏は、衆議院鳥取1区選出の当選12回で、67歳。総裁選挙には5回目の挑戦となり
ます。
鳥取県知事や自治大臣を務めた石破二朗氏の長男として生まれました。
慶応大学を卒業後、銀行に勤めていましたが、田中角栄・元首相の勧めで政治の世界に入りました。
旧田中派の事務局職員を経て1986年の衆議院選挙に立候補し、当時、全国最年少となる29歳で初当選します。
そして、リクルート事件をきっかけに党内の若手議員が結成した研究会に参加し、小選挙区制の導入など政治改革を訴えました。
1993年には、政治改革法案の取り扱いをめぐって、野党が提出した宮沢内閣に対する不信任決議案に賛成して自民党を離党。新生党、新進党を経て、1997年に自民党に復党しました。
2002年に小泉内閣で防衛庁長官として初入閣し、防衛大臣、農林水産大臣を歴任しました。
自民党が野党だった2012年の総裁選挙では最も多くの党員票を獲得しましたが、決選投票で安倍元総理大臣に敗れました。
第2次安倍政権発足後は、党の幹事長や地方創生担当大臣として政権を支えましたが、退任したあとは、安倍氏と距離を置きます。
4回目の挑戦となった2020年の総裁選挙では菅前首相に敗れ、前回・2021年の総裁選挙には立候補せず河野デジタル相を支援しました。
2015年に当時の安倍首相の後継を目指したいとして立ち上げた派閥は、所属議員の減少などを受けて2021年に事実上解散しています。
ここ数年は、近い議員と政策勉強会を重ね、全国各地を回って講演するなど活動を続けてきました。
今後の日程
石破氏は、10月1日召集される臨時国会において、首班指名を受け、内閣総理大臣に就
任します。また、それに先立ち、28日の公明党大会への出席、幹事長はじめ党役員や閣僚の人事構想を練ることになります。
以 上
筆者 平木雅己(ひらきまさみ)選挙アナリスト
元NHK社会部記者。選挙報道事務局を長く勤め情勢分析や出口調査導入に尽力。小選挙区制度が導入された初めての衆議院議員選挙報道ではNHK会長賞を受賞。ゼネコン汚職事件、政治資金の不正など政治家が関わる多くの事件・疑惑も取材。その後、連合(日本
労働組合総連合会)事務局にて会長秘書(笹森清氏)として選挙戦略の企画立案・候補者指導を担当、多くの議員の当選に尽力した。
政策担当秘書資格取得後、法務大臣/自民党幹事長代理はじめ外務大臣政務官、衆参国会
議員政策秘書として、外交・安全保障、都市計画、防災、司法、治安、雇用・消費者、地方自治などの委員会や本会議質問を作成、政策立案に携わる。
☆出稿資料☆
240927出稿資料1 自民党総裁選得票数 240927出稿資料2 自民党総裁選 選挙管理委員会 当選者決定通知(国会議員各位) 240927出稿資料3 石破茂政見@総裁選公報
240927出稿資料2 自民党総裁選 選挙管理委員会 当選者決定通知(国会議員各位)
240927出稿資料3 石破茂政見@総裁選公報