自民総裁選:合同演説会を終え最終盤の闘いへ! 9氏の政見検証(下)~外交・安全保障、沖縄基地負担軽減、憲法改正について~
- 2024.9.25
- 国内・政治平木雅美選挙アナリスト記事
月12日告示された自民党の総裁選挙は、23日、党主催の政策討論会が行われました。
9人の候補者は、27日の投開票に向け、最終盤の活動を強化していきます。
主な政策についての9氏の政見を整理しました。
下編は、外交・安全保障、沖縄の基地負担軽減、憲法改正についての9氏の政見です。【届出順】
【参考資料:9氏の政見、発言比較票】
■外交・安全保障/沖縄の基地負担軽減や産業振興
●高市早苗・経済安保相
高市氏は、日本製鉄によるアメリカの大手鉄鋼メーカーUSスチールの買収計画をめぐり「経済安全保障上の問題と捉えようとしている節があるが、日本とアメリカは同盟国であり鉄鋼業界の体力をしっかりと力を合わせて強めていくのが本来の目的だ」と述べています。
沖縄の基地負担軽減や産業振興について高市氏は、「これまでも沖縄にIT産業を根づかせる取り組みに力を入れてきた。沖縄ではIT産業も観光業も強く、非常にいい形で発展している産業も多い。とにかく経済を強くし、それによって日本列島を強く豊かにしたい」と訴えています。
●小林鷹之・前経済安保相
覇権主義的な動きを強める中国との向き合い方について、小林氏は、「受け身ではなく、しっかり戦略を持つべきだ。安全保障は見たくない現実を直視する勇気が必要だが、経済は対話を通じて望ましい状況にすることが重要で、分けて考えるべきだ」と述べています。
沖縄の基地負担軽減や産業振興について小林氏は「総理大臣になったら沖縄県や市町村としっかり連携し沖縄に産業のかたまりと雇用の機会をつくっていく。航空宇宙産業、デー
タ産業、スマート農業を沖縄に持ってくるのもいい。国として地方に大胆に投資をしていく」と訴えています。
●林芳正・内閣官房長官
覇権主義的な動きを強める中国との向き合い方について、林氏は、「みずから『知中派』だと思っており、どこを押せば交渉が優位に進められるか少しは分かっているつもりだ。どうつきあっていくかをしっかり考え、日本の国益を実現していく」と述べています。
沖縄の基地負担軽減や産業振興について林氏は、「1日も早く町の真ん中にある普天間基地の返還を成し遂げなければならない。安倍、菅、岸田内閣で必死でやってきた流れを受け継ぐ。皆さんが一日千秋の思いで待っている願いを総理大臣になった暁には加速化したい」と訴えています。
●小泉進次郎・元環境相
北朝鮮による拉致問題への対応について小泉氏は、「私が総理になったら同世代どうしのトップになる。父親どうしが会っているので、歴史の中で関係を築いた礎のもとに、新たな対話の機会を模索したい。トップの動く外交で、新たな展開を切りひらきたい」と述べています。
沖縄の基地負担軽減や産業振興について小泉氏は、「新たな産業をつくり沖縄を元気にする。観光業やサービス業で働く人の所得を上げるため専門の人材を育成する新たな教育機関をつくる。観光業だけに依存しない二刀流とも言える稼げる産業を次世代につくらなければならない」と訴えています。
●上川陽子・外相
上川氏は、外交に臨む基本姿勢として、「『トップ外交での役割を果たしたい』と言う岸田総理大臣を支えてきたが、総理大臣になっても同じような方向性でしっかり対応したい」と述べています。
沖縄の基地負担軽減や産業振興について上川氏は、「性犯罪や性暴力の被害者の声に耳を傾けながら取り組んできた自負は誰にも負けない。アメリカ軍の基地関係者による性犯罪、性暴力は二度と起こさせないという厳しい姿勢で交渉に臨む。沖縄の安全・安心をしっかりつくっていく」と訴えています。
●加藤勝信・元内閣官房長官
加藤氏は、「日朝関係だけで事が動くわけではなく、アメリカとの関係などいろいろな動きの中でタイミングを見極めなければならない。タイミングが来た時にしっかり話ができるための努力が大事だ」と述べています。
沖縄の基地負担軽減や産業振興について加藤氏は、「所得倍増を命懸けで実現する。沖縄の県民所得を上げることは悲願とされており実現したい。沖縄の経済は国の財政支出に依存する割合が高く、沖縄関連予算を増やすことを1つのバネとして経済を拡大し所得を上げていく」と訴えています。
●河野太郎・デジタル相
覇権主義的な動きを強める中国との向き合い方について、河野氏は、「同志国や民主主義
の国々で同じ戦略を持って対応にあたることが力になる。ASEANやグローバルサウスの国々と裏で共同戦線を張っていくことが大事だ」と述べています。
沖縄の基地負担軽減や産業振興について河野氏は、「中国の人民解放軍がアメリカと肩を並べるまで軍事力を増強し、尖閣諸島周辺では毎日のように海警局が活動している。自衛隊と在日アメリカ軍でどうやって日本、沖縄、尖閣諸島を守るのかしっかり議論しなければならない」と訴えています。
●石破茂・元幹事長
石破氏は、新たな大統領が日本に防衛上のさらなる負担を求めた場合の対応を問われ「正当性を持つとは思わない。アメリカの戦略を担っているのは日本にあるアメリカ軍基地であり、それを論理的に説明すれば誰が大統領でも日本の主張の正当性は認められる」と述べています。
沖縄の基地負担軽減や産業振興について石破氏は、「日米地位協定の見直しに着手する。どれほど難しいことかは承知しているが運用の改善だけで済むとは思わない。アメリカ軍基地は自衛隊と共同管理にする。日本の責任は重くなるが主権国家としての責任を果たさなければならない」と訴えています。
●茂木敏充・幹事長
茂木氏は、大統領がかわる米国との関係について「新大統領が決まったらすぐに会いたい。共通の脅威にどう対応し協力していくかを議論し、大統領が就任する来年1月20日までに日米が共通の認識を持っている状態をつくりたい」と述べています。
沖縄の基地負担軽減や産業振興について茂木氏は、「アメリカの大統領が決まったら、すぐに会談を行い基地問題を話し合いたい。基地の返還を順次進め跡地の利用も進めていく。複雑な問題だがトランプ前大統領から『タフネゴシエーター』と呼ばれた私だから必ずやり通せる」と訴えています。
■憲法改正について
●高市早苗・経済安保相
高市氏は、人権と公共の福祉の関係について「自由と権利には責任と義務が伴う。SNSで誹謗中傷や偽情報があっても『表現の自由』が勝ってしまうので公共の福祉を明確にしたい」と訴えています。
●小林鷹之・前経済安保相
小林氏は、憲法の前文をめぐり「アメリカの占領下で作られた憲法の前文には日本語としておかしなところがある。今の日本を取り巻く環境とも著しく異なっており改正すべきだ」と訴えています。
●林芳正・内閣官房長官
林氏は、「発議の要件が合意形成を非常に難しくしている。ハードルを引き下げたほうが憲法改正を身近に感じてもらえる」と訴えています。
●小泉進次郎・元環境相
小泉氏は、「1票の格差を真正面から議論したい。本当に都市部で議員の数を増やすことが必要なのか、これで地域の課題を解決できるのか」と訴えています。
●上川陽子・外相
上川氏は、「地方自治の項目が4条しかない。国と地方のあり方など地方自治の項目について、これからの国の形を見据えた検討をしていく必要がある」と訴えています。
●加藤勝信・元内閣官房長官
加藤氏は、「憲法改正の規定はあまりにかたい。憲法をより身近なものにする意味で改正規定を変える議論をしていく」と訴えています。
●河野太郎・デジタル相
河野氏は、国際社会での日本の役割をめぐり「一国平和主義からの脱却が必要だ。いざという時は域外の平和と安定にもコミットするため、応分の責任と負担をいとわないことを憲法に明記するべきだ」と訴えています。
●石破茂・元幹事長
石破氏は、「衆参いずれかの議員の4分の1以上から要求があれば臨時国会を開かなければならないが『何日以内』と書いていない。20日以内なら20日以内と書かなければ国民の権利を担保できない」と訴えています。
●茂木敏充・幹事長
茂木氏は、「地方の視点や地方自治をどうしていくかというところが薄い。その議論は1票の格差の議論や合区の解消などにもつながっていくのではないか」と訴えています。
今後の日程
終盤戦に入っている総裁選挙は、党員、党友による投票が26日までに締め切られたあと、27日に国会議員の投票が行われ、あわせて開票され、新総裁が決定します。
以 上
筆者 平木雅己(ひらきまさみ)選挙アナリスト
元NHK社会部記者。選挙報道事務局を長く勤め情勢分析や出口調査導入に尽力。小選挙区制度が導入された初めての衆議院議員選挙報道ではNHK会長賞を受賞。ゼネコン汚職事件、政治資金の不正など政治家が関わる多くの事件・疑惑も取材。その後、連合(日本
労働組合総連合会)事務局にて会長秘書(笹森清氏)として選挙戦略の企画立案・候補者指導を担当、多くの議員の当選に尽力した。
☆出稿資料☆
240926出稿資料1 自民総裁選:9人の候補の主な政見 240926出稿資料2 自民総裁選:9人の候補の主な政見 240926出稿資料3 自民総裁選:9人の候補の主な政見 (1)
240926出稿資料2 自民総裁選:9人の候補の主な政見
240926出稿資料3 自民総裁選:9人の候補の主な政見 (1)