立民代表選:合同演説会日程を終え、4氏は最終盤の闘いへ!4氏の政見検証(中)~経済・財政政策 社会保障・教育無償化・格差是正など 内政面の課題について~
- 2024.9.20
- 国内・政治平木雅美選挙アナリスト記事
9月7日告示された立憲民主党の代表選挙は、18日、党主催の最後の街頭演説会と政策討論会が行われました。
4人の候補者は、23日の臨時党大会での投開票に向け、最終盤の活動を強化していきます。
主な政策についての4氏の政見を整理しました。
中編は、経済・財政政策、社会保障・教育無償化・格差是正など内政面の課題です。【届出順】
【参考資料:4氏の政見、発言比較票】
■消費税について
●野田佳彦・元首相
野田氏は、「税率を1回下げたら戻すのが大変だと思っていて軽々に下げていいとは思わない。税制全般を見直す中で消費税の扱いをどうするか議論すべきだ」と述べています。
●枝野幸男・前代表
枝野氏は、「物価高で低所得者の人は困っているが消費税を下げても焼け石に水だ。むしろ財源を確保して中低所得者向けに消費税を超える給付をして支えるべきだ」と述べています。
●泉健太・代表
泉氏は、「食料品の税率を軽減すれば『給付付き税額控除』と同じく低所得者向けの効果がある。時限措置は相当難しく、恒久的な直間比率を議論すべきだ」と述べています。
●吉田晴美・衆議院議員
吉田氏は、「時限的な減税の立場を取っている。消費を喚起する3年間にすべきで、特に食料品は収入が低い世帯に重い税負担であり減税を検討する立場だ」と述べています。
■経済・財政政策
●野田佳彦・元首相
野田氏は、「自民党は大企業優先だが、われわれは個人の家計を重視することが決定的な違いだ。税の再分配としての消費税の還付や、ベーシックサービスの拡充、それに教育の無償化など家計が元気になるような政策を打ち出すことが大事だ」と述べた上で、「金利が低い状況は政府にとって借金がしやすく最近はのほうずに借金している傾向がある。日銀と政府がどういう目標で金融や財政政策をしていくか、共同声明=アコードをもう1回見直すところから始めないといけない」と訴えています。
●枝野幸男・前代表
枝野氏は、「アベノミクスで大企業の収益だけは上がったが、国民生活は間違いなく悪くなった。物価高で苦しむ人の暮らしを支えるには、即効性が必要であり、給食費をタダにし、ガソリン税を下げるなど、即効性のあるものを最大限やる」と述べた上で、「この30年は規制緩和や小さな政府、自己責任という名のもとに人を切り捨ててきた。チャレンジには安心が必要であり、保育や子育て、介護などの安心を高めるための投資は、経済をよ
くすることになる」と訴えています。
●泉健太・代表
泉氏は、「党が主張している給付付き税額控除に加えて、食料品の税率を下げることも選択肢に入れるべきだ。一般の人の資産形成にネガティブであってはならず、NISAには大賛成だ。金融教育もしっかりやり、金融を盛り上げていきたい」と述べた上で、「党の経済政策には教育の無償化や保育・介護の待遇改善、それに格差是正のための税制改正が入っている。本当に格差を是正するなら、所得税の累進性の強化や法人税率の引き上げは必要だ」と訴えています。
●吉田晴美・衆議院議員
吉田氏は、「円安や物価高が直撃している食料品の消費税を、時限的に非課税にし、国民
に『大丈夫だよ』というメッセージを発していくことが大事だ。個人消費に加え、中小企業をもう一度、強くしていくことが必要だ」と述べた上で、「日本経済は、女性の力を引き出すことができていない。選択的夫婦別姓を実現することは経済政策とも言える。男性や女性という枠から自由になる日本をつくることで、伸びしろのある経済を実現したい」と訴えています。
■地域活性化の政策
●野田佳彦・元首相
野田氏は、「農業の就業者減少に歯止めをかける政策が自民党政権にはない。令和版の国立農業公社をつくり、就農したい人を研修し、給料も社会保険もつけ、5年間は中山間地域で働いてもらう」と訴えています。
●枝野幸男・前代表
枝野氏は、「『小さな政府』は時代遅れなのに自民党の総裁候補は『規制緩和だ』と言っていて、特に地方にしわ寄せがいく。地方で住み続けられるよう医療や介護など公共的なサービスの担い手の賃金を底上げすることが大事だ」と訴えています。
●泉健太・代表
泉氏は、「地域活性化の大きなカギは再生可能エネルギーだ。住宅の断熱やソーラーパネル、蓄電池の設置を支援する。そうすれば地元の工務店や電器店にも仕事がまわる。東京頼みではない地元でお金がまわる仕組みをつくる」と訴えています。
●吉田晴美・衆議院議員
吉田氏は「国公立大学を無償化し、特に東京以外の地域をしっかり支えたい。交付金をつけて、研究者や学生、それに留学生に来てもらい、研究力を高めて新しい産業をつくっていく」と訴えています。
■社会保障・教育無償化・格差是正
●野田佳彦・元首相
野田氏は、「今の公的年金制度の『財政検証』の内容を検証する。給付水準を物価や賃金
の上昇率より低く抑える『マクロ経済スライド』の妥当性も含めて検討し、持続可能な年金制度を構築していきたい」と述べた上で、「一番大きなテーマが教育の無償化だ。大学に行きたいと思う人なら誰もがチャンスをつかめる国にしたい。学ぶチャンスを与え、将来世代に投資する世の中をつくることを誓いたい」と訴えています。
●枝野幸男・前代表
枝野氏は「これからの社会保障は現物給付が重要だ。介護や医療、安心できる保育所などのサービスを提供しなければならない。また、保育や介護などの担い手が希望すれば、結婚や子どもを産み育てることができる収入を得られるようにする」と述べた上で、「足元でやらなければならないことは、苦しい家計や中小企業を給付でしっかり支えることだが、その先のビジョンが自民党の総裁候補からは聞こえてこない。私は『人間中心の経済』で
日本を立ち直らせる」と訴えています。
●泉健太・代表
泉氏は、「毎月の保険料負担は多少、増えることはあるが、厚生年金の加入者を増やすことに取り組みたい。今よりも少ない月収の人でも厚生年金に入れるようにして将来を安心させる取り組みは必ずやりたい」と述べた上で、「自民党の政治は強い者がどんどん強くなる政治であり、これを変えなければならない。私たちの政策には、非正規雇用の人の正規化や、賃上げ、介護・保育の待遇改善、それに教育の無償化が組み込まれている」と宇訴えています。
●吉田晴美・衆議院議員
吉田氏は、「保育士や介護士の待遇改善は国がやるべきで、給与を上げていくことは絶対に必要だ。また、家賃も大きな負担で家賃補助により可処分所得を増やすべきだ。時代に合わない保育士の配置基準は改善する必要がある」と述べた上で、「株価がバブル期よりも高くなっているが、私たちの暮らしはよくならず、アベノミクスの失敗が如実にあらわれている。収入が1億円以上の人には金融所得課税を強化したい。格差の是正なしに経済はよくならない」と訴えています。
■選択夫婦別姓について
●野田佳彦・元首相
野田氏は、「多様性を認め合う共生社会をつくり、ジェンダー平等を実現するため選択的夫婦別姓を速やかに実現する。自民党が反対する状況が続いてきたが、経団連も早期実現
を主張するようになった。チャンスを逃してはいけない」と述べました。
●枝野幸男・前代表
枝野氏は、「女性の力が発揮しにくい仕組みや慣習が染みついており、その象徴が選択的夫婦別姓の問題だ。実現に向けて大きなチャンスを迎えていて、この風穴を開けることで古い価値観を変えていく突破口になる」と述べました。
●泉健太・代表
泉氏は、「代表に就任し、最初に執行役員の半分を女性にして党の中身を変えることができた。日本はジェンダーギャップ指数が低くもっと女性活躍の取り組みを党だけでなく日本全国に広げていくべきだ」と述べました。
●吉田晴美・衆議院議員
吉田氏は、「選択的夫婦別姓が実現していないことで、経済のキャップがはめられている。導入に執念を持って取り組み、政権交代を果たして実現したい。女性は脇役ではなく、政治や経済の主役だと訴えたい」と述べました。
今後の日程
今回の代表選で、全体の半分のポイントを占める地方議員や党員・サポーターの「地方票」は、郵便投票が20日、インターネット投票は22日の午後5時で締め切られます。
4人の陣営では、投票日に直接投票する、国会議員に加え、1人1ポイントの投票権を持つ100人近くの公認候補予定者の動向も勝敗に影響しかねないとみて、働きかけを強め、支持拡大に全力を挙げることにしています。
以 上
筆者 平木雅己(ひらきまさみ)選挙アナリスト
元NHK社会部記者。選挙報道事務局を長く勤め情勢分析や出口調査導入に尽力。小選挙区
制度が導入された初めての衆議院議員選挙報道ではNHK会長賞を受賞。ゼネコン汚職事
件、政治資金の不正など政治家が関わる多くの事件・疑惑も取材。
その後、連合(日本労働組合総連合会)事務局にて会長秘書(笹森清氏)として選挙戦略
の企画立案・候補者指導を担当、多くの議員の当選に尽力した。
政策担当秘書資格取得後、法務大臣/自民党幹事長代理はじめ外務大臣政務官、衆参国会議員政策秘書として、外交・安全保障、都市計画、防災、司法、治安、雇用・消費者、地方自治などの委員会や本会議質問を作成、政策立案に携わる。
☆出稿資料☆
240920出稿資料① 立民代表選:4氏主な政見比較票 240920出稿資料② 立民代表選:4氏主な政見比較票 (1)
240920出稿資料② 立民代表選:4氏主な政見比較票 (1)