自民党総裁選 9/9高市早苗氏、9/10加藤勝信氏、9/11上川陽子氏も立候補表明、過去最多の9人の候補者による争いへ
- 2024.9.11
- 平木雅美選挙アナリスト記事国内ニュース
今月12日告示、27日に投開票が行われる自民党総裁選挙に、今週9日高市早苗・経済安保相、10日加藤勝信・元内閣官房長官、11日上川陽子・外相がそれぞれ立候補を表明しました。
先週までに立候補を表明した6人の候補者に加え、これで合わせて9人が立候補する見通しで、自民党総裁選挙は、現行制度が実施されてから最も多い候補者によって争われることになります。
高市氏、加藤氏、上川氏の政見についてまとめました。
9月9日:高市早苗・経済安保相 「日本をもう一度世界のてっぺんに」
【参考資料1 高市早苗氏の政策資料】
高市氏は9日、国会内で記者会見しました。
冒頭、「総裁選挙に立候補する。国の究極の使命は、国民の生命と財産、領土・領海・領空・資源、そして国家の主権と名誉を守り抜くことだ」と述べました。
その上で「総合的な国力の強化が必要だ。それは外交力、防衛力、経済力、技術力、情報力であり、すべてに共通する人材力だ。何よりも経済成長が必要だ。経済成長をどこまでも追い求め、日本をもう一度世界のてっぺんに押し上げたい」と強調しました。
そして、危機管理分野への投資によって国民の安心と安全を確保し、成長分野などに戦略的な財政出動を行って、強い経済を実現すると説明しました。
さらに安全保障政策をめぐり、宇宙やサイバー空間などを含めた国防体制を構築するほか、主体的な外交によって同盟国や同志国との連携を進める考えを示しました。
また、北朝鮮による拉致問題について「解決が困難になっている現状は否めないが、あら
ゆる手段を尽くしてすべての被害者の帰国を追い求めていく」と述べました。
一方、政治とカネの問題を受けた党改革をめぐっては「カネの入りと流れから属人性を徹底的に排し、使途の公平性と公正性を担保できる仕組みをつくる」と述べました。
収支報告書に不記載のあった議員を次の選挙で公認するか問われたのに対しては、「党の調査で決着した処分を総裁がかわったからといって、ちゃぶ台返しをするのは独裁だ。党で決めた処分をひっくり返すような行動は取らない」と述べました。
さらに党に適材適所の人事システムを整備するとともに、総理大臣や閣僚の給与を廃止する考えを示しました。
また「令和の省庁再編」に挑戦するとして、インテリジェンスの司令塔となる「内閣情報局」や、サイバーセキュリティー対策などに一元的に取り組む機関の設置に意欲を示しました。
憲法改正については「自衛官の名誉と誇りを守り実力組織として揺るぎない位置づけをするため、憲法を改正する。少しでも早く国民投票ができる環境をつくるため頑張りたい」と述べました。
皇位継承をめぐっては「1つの血統のもとで126代も続いた皇室は日本にしかない宝物だ。皇統をお守りするため皇室典範を改正する」と述べました。
そして総理大臣になっても靖国神社に参拝するか問われ、「国策に殉じられ自分たちの祖国を守ろうとした方に敬意を表し続けることは希望するところだ」と述べました。
一方、「選択的夫婦別姓」については、過去に旧姓を使用できる環境整備を国などに義務づける法案を作成したことに触れ、「法案が通ればほとんどの不便は解消される」と述べ、導入に慎重な姿勢を示しました。
高市氏が総裁選挙に挑戦するのは、前回・3年前に続いて2回目です。
9月10日:加藤勝信・元内閣官房長官「最優先は国民の所得倍増」
【参考資料2 加藤勝信氏の政策資料】
加藤氏は、10日、国会内で記者会見しました。
この中で加藤氏は「最優先で推し進めたいことは国民の所得倍増だ。これ以上に重要な政策はない。待ったなしで強い覚悟で取り組み、国民の豊かな生活を実現し、短期間で必ず成果を出す」と述べました。
その上で、政治とカネの問題を受けて党改革や政治資金改革を断行するとして、それぞれの議員に対し説明責任を果たすよう働きかけを徹底するとともに、党として収支報告書への不記載額に相当する金額を、国庫に返納する手続きを検討する考えを明らかにしました。
さらに党から議員に支給される「政策活動費」の1年ごとの上限など改正政治資金規正法で検討事項となっている課題について、1年以内に法制化する方針を示しました。
一方、社会保障をめぐっては、厚生労働大臣を3回務めた経験に触れ「制度が持続可能なのかという懸念の声を聞く。必要な人に必要なサービスが提供される仕組みと、能力に応じて負担し支え合う仕組みを構築していく」と述べました。
その上で、急激な出生数の低下は社会の持続性を揺るがすとして給食費、こどもの医療費、出産費用の負担をなくす「3つのゼロ」を目指すと明言しました。
また、北朝鮮による拉致問題について「すべての拉致被害者の即時帰国に向け、日朝首脳会談の早期実現に努力していく」と強調しました。
さらに、憲法改正については、党の改正実現本部の事務総長として論点整理などに取り組んだとした上で、自衛隊と緊急事態条項を明記する改正の実現に意欲を示しました。
「選択的夫婦別姓」については「家族同姓制度は維持しつつ、まずは法的・社会的な不都合について解決するため、旧姓については通称使用にとどまらず法律上の姓として使用を認める『旧姓続称制度』もあり得ると考えている」と述べました。
また、小泉進次郎氏が主張する解雇規制の見直しについて考えを問われると、「日本の現在の市場は転職して給与が上がる実態にはなっておらず、認めるのはまだ早い」と述べ、慎重な姿勢を示しました。
加藤氏は国会内で記者団から衆議院の解散時期について考えを問われたのに対し、「まずは総裁選挙を通じて、どこまで自民党が信頼を取り戻せるかをしっかり見極める必要がある。衆議院議員の任期は1年余りあるので、その中で適切な時期に解散することになるが、新しく政権がスタートするので、できるだけ早く国民の信任を受ける選挙を行うことが必要だ」と述べました。
9月11日:上川陽子・外相「難問から逃げず新たな日本を築きたい」
【参考資料3 上川陽子氏の政策資料】
上川氏は、総裁選挙に立候補するにあたり11日、都内で記者会見しました。
この中で上川氏は「外務大臣として『一意専心』、職務を遂行することに全力を注いできたが、岸田総理大臣が総裁選挙への不出馬を表明したことを受け、熟慮の末、決断した。総理大臣として難問から逃げず国民と新たな日本を築きたい」と述べました。
その上で「政治と縁のない家庭に生まれ育ったからこそ国民目線でその声に耳を傾け応えていきたい。声なき声、届きにくかった女性や子どもたち、あるいは犯罪被害者の声をしっかり受け止めてきた。『日本の新しい景色』をぜひ一緒につくりたい」と強調しました。
上川氏は午前10時半ごろからおよそ10分間、総理大臣官邸で岸田総理大臣と会談し、自民党総裁選挙に立候補することを報告しました。
会談後、上川氏は記者団に対し「岸田総理大臣からは『頑張ってほしい』と大変大きな励ましの言葉をいただいた」と述べました。
その上で「白いキャンバスに皆さんの希望や思いを描き、新しい景色として一緒につくっていきたいという思いを込めて、このあとの記者会見に臨みたい」と述べました。
また、記者団に対し「日本は国際社会の中で存在感のある、信頼される国だ。国民に理解され、信頼される外交を打ち出してきたことを、今回の戦いにもつなげていきたい」と述べました。以 上
筆者 平木雅己(ひらきまさみ)選挙アナリスト
元NHK社会部記者。選挙報道事務局を長く勤め情勢分析や出口調査導入に尽力。小選挙区制度が導入された初めての衆議院議員選挙報道ではNHK会長賞を受賞。ゼネコン汚職事件、政治資金の不正など政治家が関わる多くの事件・疑惑も取材。
その後、連合(日本労働組合総連合会)事務局にて会長秘書(笹森清氏)として選挙戦略の企画立案・候補者指導を担当、多くの議員の当選に尽力した。
政策担当秘書資格取得後、法務大臣/自民党幹事長代理はじめ外務大臣政務官、衆参国会議員政策秘書として、外交・安全保障、都市計画、防災、司法、治安、雇用・消費者、地方自治などの委員会や本会議質問を作成、政策立案に携わる。
☆出稿資料☆
240911出稿資料1 高市早苗政策資料 240911