【隈研吾建築 早い老朽化 なぜ?】
- 2024.9.8
- 国内ニュース
隈 研吾氏(70歳)は、日本の著名な建築家です。1979年東京大学建築学科大学院修了後、
1990年に隈研吾建築都市設計事務所を設立し、これまでに多くの建築物を手掛けてきました。
防腐塗料だけを塗った裸木を用いた外観が特徴的な、隈氏の建築作品は、日本建築学会賞、フィンランドより国際木の建築賞、イタリアより国際石の建築賞ほか国内外で受賞するなどしています。
しかし近年、隈氏の手掛けた建築がことごとく劣化し、改修再築が必要であるとのことが明らかになりました。
歌川広重の版画・肉筆画94点のほか、小林清親・川村清雄・徳富蘇峰の作品や関係資料など約4500点を所蔵・展示している栃木県那須郡の那珂川町馬頭広重美術館。
木材で出来た屋根部分がまだ築24年にも関わらず、3億円にも及ぶ大規模改修の必要に迫られているとのことです。独特のデザインでおなじみの貼られた木材が、ところどころ折れ曲がり、激しく傷んでいました。
多額の費用に、町民からは驚きの声が上がっているということです。
隈氏は、老朽化の原因について、この頃の木を守るための保護塗料が、今と比べて性能が低かったことなどを挙げています。
専門家界隈では「隈氏の建築は木材の新鮮さが売りなので、すぐ改修が必要になるのは明らかなのに、なぜ自治体はこぞって設計を頼むのか?」と首を傾げます。
隈氏が初めて手掛けた木造建築である高知県梼原町の「雲の上ホテル」は、グッドデザイン賞も受賞した隈氏の代表作。これは1994年竣工なのに“老朽化”で2020年12月に町が建て替えを発表、客室数も16室から3倍の規模にし、全く別の建物を新築することに決まったのだそうです。38億円に膨らんでいた道の駅を含めた事業費は23億円に圧縮するものの、新施設も隈氏の事務所が設計し、2027年7月のオープンを目指します。 現在は閉館して更地にされています。
町営施設であるのにも関わらずわずか27年しかもたなかったことになります。昔は町営でしたが、今は高知オリエントホテルが運営しており、民間経営ともなれば部屋数が少なく、集客が出来ない建物は取り壊される宿命なのです。
2012年にできた隈氏の代表作の1つ新潟県長岡市大手通の複合拠点施設「アオーレ長岡」があります。市は2024年度、施設の長寿命化に向けた修繕計画を本格化させると発表しました。「アオーレ長岡」はまだ築10年ですが、相当ガタが来ているとのことでした。
アオーレ長岡は大屋根を支えるむき出しの鉄骨構造部分にサビが発生しています。現在は建設時の保全計画に基づき対応しているが、実態と合わない点も出てきたため、改めて計画を作ることにしたそうです。
〈取りやめる自治体も〉
北海道北竜町は2023年9月、建築家の隈研吾氏が設計する展望台建設を白紙にしています。町内の観光スポット「北竜町ひまわりの里」に造ることで、新たな観光客の呼び込みなどを期待していましたが建築コストの高騰などが背景にあり、北竜町は時間やコストがかからない新たな計画に切り替えました。
〈海外では人気〉
フランスで、24年のパリ五輪を前に建てられた隈研吾氏設計のサンドニ駅は世界から訪れた多くの方から好評を得ていました。
また、スイスでは匿名の顧客のために「日本の技術と日本の美学」を取り入れた高さ130メートルの木造ビルの建築に取り組んでいます。
新たな建設による気候への影響を抑えようとする建築業者が増える中、隈氏は木材利用が拡大することを予見し、早くから木材を使ってきました。
シドニーでは世界一の高さを誇る木造高層ビルが26年に完成予定。
米ウィスコンシン州ミルウォーキーでは25階建ての木造ビルを手掛けました。
オランダのアムステルダムでは、街全体を木で作る計画もあります。
〈建物の改修や修復も建設会社にとって大きな市場となり得る〉
建物の建築から取り壊しに至るまでの費用、ライフサイクルコストが短い事を踏まえて作られているのは承知の上だそうです。改修も建設会社にとって大きな市場となり得ると隈氏は言います。。
「経済状況の厳しさから顧客はコストをより重視し、建築物の気候への影響に目を向けにくくなっている。持続可能性には重点が置かれなくなっている」
しかし日本における自然災害発生率を背景に考えますと、税金でまかなわれる公共建築の場合、災害時は避難所になりあるいは保管庫となる事を考えて設計され耐久性重視であることが求められます。
☆参考サイト☆
隈研吾氏設計の美術館が劣化でボロボロに…改修費3億円に住民衝撃 ふるさと納税で修繕計画も賛否
隈研吾氏が設計の美術館、完成から数年で木材が劣化でボロボロ…改修費用3億円
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隈研吾氏、建築物が気候に及ぼす影響に警鐘-新たな建設抑制呼び掛け
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