アメリカ大統領選 バイデン氏再選か トランプ氏の返り咲きか
- 2024.7.12
- 国内・政治
再選を狙うバイデン氏か、返り咲き目指すトランプ氏か。アメリカ大統領選は、6月28日(日本時間)、両氏によるテレビ討論会が行われ本格的な戦いが始まりました。きょうはアメリカ大統領選の現状について取り上げます。
アメリカ大統領選挙とは
アメリカ大統領選挙は、4年に1度行われます。
投票日は、「11月の第1月曜日の翌日の火曜日」と連邦法に定められています。今回2024年は11月5日となります。
有権者は、事前に登録した18歳以上のアメリカ国民で、その有権者が、大統領にふさわしいと思う人に投票します。
しかし、全米の総得票数で勝者を決めるわけではありません。投票は州ごとに行われ、それぞれの州で勝者を決めます。
各州と首都ワシントンには、人口などに応じて割り当てられた「選挙人」がいます。州の勝者はその州の選挙人を獲得します。
たとえば、カリフォルニア州で勝者となった候補は、カリフォルニア州に割り当てられた選挙人54人すべてを獲得します。
州によって選挙人の数は異なり、ほとんどの州で、勝者が州の選挙人をすべて獲得する、いわゆる「勝者総取りの方式」を採用しています。
そして全米の538人の選挙人のうち、過半数の270人以上を獲得した候補が、最終的な勝者・次期大統領となります。
これまでの動き
民主党は、再選を目指す現職大統領・バイデン氏が今年3月12日に行われた党の予備選挙で立候補者指名に必要な過半数の選挙人を確保しています。
一方、共和党の候補者選びですが、トランプ氏以外の有力候補者は選挙戦から全員撤退していて、党の予備選挙ではトランプ氏が3月12日に立候補者指名に必要な過半数の選挙人を確保しています。
今回はいち早く候補者同士によるテレビ討論が行われました。
6月28日(日本時間)、バイデン氏とトランプ氏が、主要な政策について論戦を繰り広げました。
90分にわたった討論ではインフレやウクライナ情勢、移民政策など主要な政策について論戦を繰り広げましたが、双方が互いを「史上最悪の大統領だ」と批判し合うなど、激しい非難の応酬もみられました。
CNNテレビが、討論会を視聴した有権者565人を対象に調査したところ、討論会でのパフォーマンスについて「トランプ氏の方が良かった」と答えた人が67%、「バイデン氏の方が良かった」と答えた人が33%で、トランプ氏を評価する声がバイデン氏を大きく上回りました。
また、その他の有力メディアも、ワシントン・ポストは「バイデン氏苦戦、トランプ氏は質問をはぐらかす」、ニューヨーク・タイムズは「トランプ氏の威勢にバイデン氏苦戦」、CBSテレビは「バイデン氏、序盤から声がかすれて苦戦」などいずれも見出しに「Struggle(ストラグル)」、「苦戦する、もがく」という言葉を使ってバイデン氏が押されていたと伝えています。
バイデン氏は?
民主党内では「バイデン氏が候補者にふさわしいのか」という指摘なされ、上下両院の議員や有名俳優が大統領選からの撤退を促す意見が広まりを見せています。
こうした年齢の問題を指摘する意見だけではなく、バイデン政権の政策についても批判の意見が出ています。
ガソリンや電気代、食料品も値上がりし「物価高で生活は苦しくなっている」という意見が目立ちます。
国境管理ではメキシコとの国境を法的な手続きをせずに越えてくる、いわゆる不法移民の急増を受けて、1日平均で2,500人を超えた場合、亡命申請を受理しないとする大統領令を打ち出しました。
イスラエル外交も、若い世代は、パレスチナ住民の保護を求めてイスラエルによるガザ地区での軍事作戦を批判し、バイデン氏は対応に苦慮しています。
高齢のバイデン氏自身の健康不安とともに、これら3つの政策課題は、再選を妨げかねない「アキレス腱」となっています。
トランプ氏は?
一方、トランプ氏も「アキレス腱」を抱えています。
初当選した2016年の大統領選挙の直前、かつての不倫相手への“口止め料”の支払いを有権者に知られないよう帳簿を改ざんしたなどとして、34の罪で起訴されました。
一般市民から選ばれた12人の陪審員は、34の罪すべてについて、全員一致で有罪を評決しました。
量刑を決める審理は9月に開かれトランプ氏はただちに控訴する方針です。初犯で高齢であるため、刑務所に収監される可能性は低いとの見方ですが、こちらもマイナス要因となります。
今後の予定
共和党は、7月15日から18日に全国大会をウィスコンシン州ミルウォーキーのファイサーブ・フォーラムにて開催します。
一方、民主党は、8月19日から22日に全国大会をイリノイ州シカゴ、ユナイテッド・センターにて開催しますが、バイデン氏への選挙戦からの撤退圧力は日増しに強まっています。
仮に、民主党はバイデン氏に代わる新たな候補者を選ぶとすれば、8月の全国大会での「お披露目」が期限となります。
また、7月10日の夕刊フジは、「8月19~22日にシカゴで開催される民主党大会の3週間前にバラク・オバマ元大統領夫人のミシェル・オバマ女史(60)が民主党候補指名争いに名乗り上げる――。ネタ元によると、米シリコンバレーの民主党支持IT億万長者数人はドナルド・トランプ前大統領が圧倒的強さで共和党候補に指名されるのが確実となった3月中旬頃から秘かに準備に入った。もし元ファーストレディが民主党候補に指名されれば、女性票、黒人・ヒスパニック票、マイノリティ票などが期待できる。トランプ氏と互角で戦える有力候補になる。この「サプライズ」は、7月29日にはその真偽が判るはずだ。」という衝撃的な現地情報も伝えています。
アメリカ大統領選挙は、この後、9月10日以降、候補者同士によるテレビ討論が複数回行われた後、11月5日に一般有権者による投票と開票、そして12月16日に選挙人による投票が行われます。
そして、来年2025年1月6日、大統領および副大統領当選者が正式に決定し、1月20日に大統領就任式が行われます。
以 上
筆者 平木雅己(ひらきまさみ)選挙アナリスト
元NHK社会部記者。選挙報道事務局を長く勤め情勢分析や出口調査導入に尽力。小選挙区制度が導入された初めての衆議院議員選挙報道ではNHK会長賞を受賞。ゼネコン汚職事件、政治資金の不正など政治家が関わる多くの事件・疑惑も取材。
その後、連合(日本労働組合総連合会)事務局にて会長秘書(笹森清氏)として選挙戦略の企画立案・候補者指導を担当、多くの議員の当選に尽力した。
政策担当秘書資格取得後、法務大臣/自民党幹事長代理はじめ外務大臣政務官、衆参国会議員政策秘書として、外交・安全保障、都市計画、防災、司法、治安、雇用・消費者、地方自治などの委員会や本会議質問を作成、政策立案に携わる。