【水道事業民営化による外国資本侵入 ウォーターバロンとは?】
- 2024.5.27
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自民党副総裁麻生太郎氏(83歳)は2013年4月19日、ワシントンCSIS(米戦略国際問題研究所)でスピーチを行い、その中で「日本の水道はすべて民営化する」と発言した。つまりは日本国内の水道を外資に売り渡すという宣言に等しい。
CSIS(米戦略国際問題研究所)は、外交問題評議会(CFR)の下部組織として知られている。その他多くの保守系シンクタンクの1つに過ぎないが、国会でも議論されず、公約にも一切書かれていない重大事をなぜか軽々しく約束してしまった。
日本企業とは桁違いの規模かつ、長きに渡る民営化の歴史やノウハウを持つ国際的水道企業いわゆる『水男爵』ウォーターバロンを日本の水道事業に参入して、PPP/PFI事業を推進させたい意向が感じられた。
〈PPP/PFIとは〉
PPP(Public Private Partnership)とは、行政と民間が連携して公共サービスの提供等を効率的かつ効果的に行う事を意味する。PPPには様々な方式があるが、代表的なものがPFI(Private Finance Initiative)。民間の資金やノウハウを活用して公共施設等の設計、建設、維持管理及び運営を行う手法。国土交通省によって、上下水道事業も重要分野として定められている。
〈世界の水ビジネス名付けて『水男爵(ウォーターバロン)』と呼ばれる水道民間企業のヴェオリア〉
最も、2021年ヴェオリアは、仏リヨン市で1853年に創業したジェネラルデゾー社が母体となっている。フランス共和国の第二帝政時代、都市部の水道システムを運営する民間企業が必要と考え、ナポレオン三世勅令によって誕生した。同業仏スエズを買収。売上高約370億ユーロ(6兆3億円)の巨大企業となった。
経済学者竹中平蔵氏(73歳)は、以前2016年12月19日に開催された第3回未来投資会議にて『公的資産の民間開放』水道事業へのコンセッション方式の導入を議論した。コンセッションとは、施設の所有権を移転せず、公共サービスを民間開放することで経済成長をうながす新たな政策である。
総務省の『水道財政のあり方に関する研究会』が2018年12月6日に発表した資料によると、自治体の水道事業は、2016年度時点で簡易水道を含めて全国に2033事業。内訳は以下となる。
経営主体別事業者数上水道事業(1,263)
簡易水道事業(702)
水道用水供給事業(68)
これらの水道事業の収支の状況は、2016年度において水道事業全体の収支は4044億円の黒字だが、128の事業(6.3%)が赤字となっている。この赤字事業のうち、105事業が上水道事業だ。
さらに、前述したように、法定耐用年数を超えた水道管延長の割合は、全国で15%にのぼる。実は、日本の上水道の配管の内側には、水道に含まれている重金属類や化学物質の錆がびっしりこびりついており、日本の水道は、蛇口に口を付けて、そのまま飲むことができるほど安全だというのは、すでに過去の神話となりつつある。国がこれまでのインフラ整備を考えておらず、騙し騙し使っているに過ぎない。
そして2018年12月、水道法が改正されたことによって民間事業者でも参入が可能になり、ヴェオリアは日本にも進出している。
〈現在宮城県で進む水道事業〉
西原環境(エンジニアリング)、ジェネッツ(料金徴収・顧客サービス)、フジ地中情報(漏水管理・料金徴収)などを傘下に収め、上水道事業や廃棄物処理の業務を行っている。
2019年度は、69か所の浄水場運転、80か所の下水処理上運転、180自治体の料金徴収、999件の漏水調査受託を行っている。
2021年7月5日、宮城県議会は、上下水道と工業用水の運営権を、20年間、民間企業に一括売却する議案を可決。
このため、水道利用量の減少と水道管の更新など設備更新の費用増加により、多くの自治体で水道料金の値上げをせざるを得ない状況に迫られている。
麻生氏の思惑は、全国の水道の配管を新しいものに付け替えるとすれば、おそらく数十兆円のコストがかかるため、これを税負担でやろうとすれば有権者の反対に遭って政権を失いかねないので、外資に売り渡して、外圧によって達成しようとしているらしいのだが、果たして本当にそうなのだろうか。
水道会社を民営化し海外に売り渡すことでファンドによる利益を狙っているのではないだろうか? というのは、過去に遡ったイギリスの例があるからだ。
〈イギリス 水道局民営化による大失敗。〉
政府統計『Discover Water』によると、イギリスの水道管路の総距離は、約34万5000キロ。日本水道管路の総距離は67万6500キロであるから、本州ほどしかない国土の面積に比例する形で、イギリスの水道管路の長さは、日本の約半分になる。
かつては行政が担ってきた水道事業がなぜ民間に移譲されたのか。
2016年の国民投票で51.9%の国民がEU離脱を支持、いわゆるブレグジットが起こった。サッチャー首相はさまざまな財政再建策を講じた中、水道事業の見直しに着目。当時、イギリスでは水道事業が財政を圧迫していたのでサッチャー首相は、強硬に水道事業の完全民営化を推進してすべての水道局を一気に民営化した。イギリスの例は世界でも極めて稀だ。民営化そのものは成功、水道事業は国家財政を黒字にした。
その反面、国民は地獄を見ることになる。
水道事業の所有・管理主体となった民間事業者、つまり大企業や投資ファンドは、水道インフラの維持・管理といった地道な作業には目もくれず、目先の利益を向上させるマネーゲームにのめり込んでいった。基本的には何かやっているフリをして、水道料金を上げ続ける。
利益が生まれるとさらに第三者に転売していくことも出来てしまう。
こうした事から、水道を提供するクオリティが落ち、漏水や無給水、盗水が起こり、水道供給の質が落ちて言ったという恐ろしい背景がある。
2022年3月末時点で英国の水道事業全体は606億ポンド(約121兆円)の負債を抱え、テムズウォーターの負債がそのうちの137億ポンド(2兆7億円)を占める。財務の健全性を計る指標の1つで、企業の自己資本に対する負債の割合を表す「ギアリング比率」は業界全体で68.5%、最も低い水道会社で39.7%、テムズウォーターが80.6%と最も高い。最もこの例を反面教師にしてもらいたい。
参考サイト:
水に恵まれた日本でついに始まる「水道民営化」…待ち受ける「大きな落とし穴」
水道会社の社長たちが軒並み年収1億円以上に…イギリスが「水道の完全民営化」を後悔しているワケ
お粗末なロンドンの水道が示す「民営化」の末路 老朽化で水漏れに汚水放流、再国有化に支持
世界「3大水メジャー」がついに「一強」になった歩みと今後の展開や懸念