【弁護士ログニュース=1月16日】江尻隆弁護士が元部下の美人弁護士から婚約不履行で訴えられている事件、被告江尻氏側から第2回準備書面が提出される
- 2015.1.16
- 弁護士情報
江尻隆弁護士が、元部下だった美人弁護士から婚約不履行で訴えられている事件で、被告江尻氏側から第2回準備書面が提出されましたので、全文を掲載します。
平成26年(ワ)第9289号 婚約不履行に基づく慰謝料等請求事件
原告 森順子
被告 江尻隆
準備書面(2)
平成27年1月16日
東京地方裁判所民事第30部ろA係 御中
被告代理人 弁護士鯉沼希朱
第1 初めに
1 原告は、訴訟提起後8ヶ月を経過し、裁判所から度重なる求釈明を受けたにもかかわらず、spの主張する請求根拠を明らかにできておらず意味不明の言を繰り返すのみである、特に原告は、全ての事実が不法行為と債務不履行の双方に該当する旨主張しているように思えるが、この2つの法的構成と要件事実、当該要件事実に該当する具体事実は異なること明らかであるのだから、原告の主張は誠に杜撰な主張である。原告は、要件事実に該当する行為を特定し、法的構成ごとに明確に峻別して論ずるべきである。
2 次に、原告は、各事実がそれぞれいかなる損害を発生させたというひもづけに関しても未だに明らかにできていない。
3 この結果、原告の主張は法的には全て根拠を欠き、本件訴訟の原告の請求は法的根拠が不備であるので、主張自体失当で棄却されるべきであるが、本書ではこれ以上の手続の遅れを避けるため、あえて被告において、原告が主張していると思われる訴訟物ごとに、被告主張を述べることとする。
第2 原告の各請求に対して
1 婚約不履行(慰謝料5000万円)に対して
(1)原告は、債務不履行又は不法行為があったと主張する。なお、原告は、「婚約成立は1992年3月頃」(原告準備書面(2)1頁)と主張する。
(2)被告主張
ア 主張自体失当
(ア)特に不法行為について
婚約は身分上の契約関係であり、仮に婚約をしたにも関わらず結婚しなかったのであれば債務不履行を構成することはあるとしても、不法行為となる根拠が理解できない(原告は、過激な言辞を弄するものの、何ら不法行為を基礎づける具体的事実を主張していない)。
(イ)そもそも「婚約」について
原告は、「被告の結婚前提での交際申込み時期」が平成3(1991)年12月であるとし、また原告が交際に応じたのは、1992年2~3月であるので、婚約成立は1992年3月頃であると主張する(原告準備書面(2)1頁)。
しかし、「結婚前提での交際申込み」が「結婚申込みの意思表示」ではないことは言うまでもなく、また「交際に応じる」ことが結婚の承諾の意思表示ではないことも言うまでもないことであるので、原告は、そもそも結婚約束(婚約)についての要件たる申込みの意思表示も承諾の意思表示もいずれも主張していないのであるから、原告の婚約不履行に関する主張は、主張自体失当である。
なお、原告は、その準備書面中で、「約束とは、まず言葉ありきである。」(原告準備書面(1)11頁)などと述べていながら、申込みについても承諾についても何ら主張できていないことは、原告の主張がいい加減で不当なものであることを端的に示すものである。
イ 否認
被告準備書面(1)で述べたように、原告と被告間に婚約が成立するなど、そもそも有りえない。
ウ 抗弁各種
被告準備書面(1)で述べたとおりである。
なお、原告は、婚約不履行の時期を平成24(2012)年7月と主張するようであるが(原告準備書面(2)4頁)、原告の主張によれば、婚約成立から20年以上もの間結婚約束が維持されて突然破棄されたなどという経緯になるのであって、荒唐無稽も甚だしいものであるうえ、原告の作成した乙14の内容(平成24年7月に原告が被告に対して借入を申し込んだ体裁のファクスに送付されている2枚目の携帯電話の文章)とも矛盾するものである。
2 「二世帯住宅購入費用約1億8000万円その他の売買に必要な諸費用」「の半分」(9000万円)に対して
(1)原告は、債務不履行又は不法行為があったと主張する。
(2)被告主張
ア 主張自体失当及び否認
原告は、「二世帯住宅費用約1億8000万円その他の売買に必要な諸費用」「の半分」を被告が負担する旨原告と被告が約束していたことを具体的に主張していないのであり、そもそも被告の債務負担根拠を主張していない。(ちなみに、仮に債務負担根拠が具体的に主張されたとしても、原告が何ら証拠提出もしていないことからするとそれが書面によるものとは思われないところ、原告が弁護士であること等からしても、書面などの明確な意思表示もなく、そのような多額の金銭の負担を被告に負わせるだけの根拠となりえないことは原告自体十分理解しているはずである。本件訴訟がためにするものであることが明らかである。)また原告が、その債務の履行を請求するでもなくその「不履行」によって損害を被ったとする主張は意味不明である。さらに、不法行為に関しては、原告が自らの判断で二世帯住宅を購入したことにつき、不法行為の要件たる、権利等侵害、違法性、被告の故意過失、原告の損害、のいずれもおよそ認められず、これを不法行為とする根拠は全くない(二世帯住宅は原告の単名で登記され、現在も原告の資産であり、被告が何故その一部を支払うべきか、何が不法行為になるのかの説明が全くない)。
イ 抗弁各種
原告の主張によれば、「二世帯住宅の購入費用約1億8000万円その他売買に必要な諸費用」「の半分」を被告が負担するのは、原告との結婚約束が前提であったようである(訴状18頁)。そうであれば、そのような約束は、そもそも法的保護に値せず、公序良俗違反であり、また不法原因給付の趣旨からしても原告の請求は許されず、さらに消滅時効又は除斥期間によって排斥され、または和解契約によって消滅しているのであるから、原告の請求はおよそ認められる余地はない(被告準備書面(1))。
3 「事実婚(内縁)の3軒のマンションの家賃」「の(一部支払後の)残金」(2056万2000円+860万円)に対して
(1)原告は、債務不履行又は不法行為があったと主張する。
(2)被告主張
ア 主張自体失当及び否認
この請求に関しても上記2と同様である。
すなわち、原告は「事実婚(内縁)の3軒のマンションの家賃」「の(一部支払後の)残金」(2056万2000円+860万円)を被告が負担する旨原告と被告が約束していたことを具体的に主張していないのであり、そもそも被告の債務負担根拠を主張していない。また、その債務の履行を請求するでもなくその「不履行」によって損害を被ったとする主張は意味不明である。さらに、不法行為に関しては、原告が自らの判断で賃借し居住等したマンション等の家賃や光熱費等を自らの判断で支払ったことにつき、不法行為の要件たる、権利等侵害、違法性、被告の恋過失、原告の損害、のいずれもおよそ認められず、これを不法行為と構成する根拠は全くない。
イ 抗弁各種
原告の主張によれば、「事実婚(内縁)の3軒のマンションの家賃」「の(一部支払後の)残金」(2056万2000円+860万円)については、(上記2の場合と異なって全額負担のようであるが、)これを被告が負担するには、原告との結婚約束が前提であったか又は不倫関係維持のためというもののようである。そうであれば、そのような約束は、そもそも法的保護に値せず、公序良俗違反であり、また不法原因給付の趣旨からして原告の請求は許されず、さらに消滅時効又は除斥期間によって排斥され、または和解条項によって消滅しているのであるから、原告の請求はおよそ認められる余地はない(被告準備書面(1))。
4 「騙して和解の損害金」(1750万円及びこの件の弁護士費用300万円)に対して
(1)原告は、債務不履行または不法行為があったと主張する。なお、原告が、債務不履行については、「労働者に必要もない債務を負わせてはならないという労働契約上の法的義務違反となる」(原告準備書面(2)3頁)として、労働契約上の義務違反を主張するようである。
(2)被告主張
ア 主張自体失当又は否認
「労働契約」に関して、原告は、いつ、どのように成立したのかの具体的主張はしていないが、まず、原告は、当初はアソシエートとして本件事務所に参画したが、平成7(1995)年以降は本件事務所の他のパートナーらとパートナー契約(組合契約)を締結してパートナーとして所属していたのであるから、そもそも原告と被告間には労働契約は成立しておらず、原告と被告間に労働契約が成立していたとする原告主張は荒唐無稽であって、原告が事実に基づかない主張を平気ですることを如実に示すものである。さらに、原告が代理人弁護士を選任して調停によって和解金負担したのは平成12(2000)年3月であるところ、原告は不祥事(下記5及び被告準備書面(1)の10頁5行目から下から3行目まで参照)によりそれに先立つ平成11(1999)年8月に本件事務所を退職済みであったのであり、そもそも和解金負担及び弁護士費用負担の当時なおも原告と被告間に「労働契約」が存在していたことを前提とする原告主張は意味不明である。
さらに、弁護士である原告が、第三者から職務上のミスを追及されたために自ら代理人を選任して調停に参加し、調停を成立させて和解金を支払って当該第三者との紛争を解決したことにつき、不法行為の要件たる、権利等侵害、違法性、被告の行為過失、原告の損害、のいずれもおよそ認められず、これを不法行為と構成する根拠は全くない。
*この時の和解金は、原告自身のミスへの損害賠償の性質を有していたのであり、本来は、当時原告が認めていたように、原告自身が全額負担すべきであったものであって、むしろ被告は原告に迷惑をかけられた立場である(乙10「結局江尻先生にはご迷惑をかけてしまい、口惜しいです」)。被告は、本件事務所の名誉のために、和解金の一部を負担してこの件を解決し原告の負担を軽減したのが実質であって、原告から感謝こそされ、非難されるいわれはないはずである。
なお、被告準備書面(1)の9頁に記載したとおり、保険金が合計2000万円出たので(乙12)、原告の最終的な負担は750万円であった。
イ 抗弁各種
この点に関して原告は、被告との何らかの約束めいたものを主張しているものではないようであるが、いずれにしても、原告の請求は、消滅時効又は除斥期間によって排斥され、また和解契約によって消滅しているのであるから、原告の請求は認められる余地はない(被告準備書面(1))。
5 「退職強要」(金額不明)に対して
(1)原告は、債務不履行又は不法行為があったと主張する。なお、原告は、債務不履行については、労働契約上の義務違反を主張するようである。
(2)被告主張
ア 主張自体失当及び否認
原告は、「退職強要」について独立した請求であると主張するようであるが、これについて何ら損害の主張はなく、そもそも訴訟物として提示されていないか仮に提示されたとしても主張自体失当である。
なお、「労働契約」に関しては、上記4で述べたところと同様に、具体的主張もなく、また荒唐無稽の主張である。不法行為についても、その要件のいずれもおよそ認められない。退職時のパートナー会議議事録は、乙20の1・2のとおりであり、原告は本件事務所のパートナーとしての全ての請求報酬をルールに従って事務所に開示し、売上に計上し、利益の分配を受けるべきであったにも拘わらず、自己の報酬請求の一部に「開示漏れ」があった不祥事(「公文書偽造/横領刑事告発もの」とも評される行為)により、自発的に退職したものである。
イ 抗弁各種
この点に関して原告は、被告との何らかの約束めいたものを主張しているものではないようであるが、何れにしても、原告の請求は、消滅時効又は除斥時効によって排斥され、また和解条項によって消滅しているのであるから、原告の請求はおよそ認められる余地なない(被告準備書面(1))。
6 「プロポーズを断らせる」(金額不明)に対して
(1)原告は、債務不履行又は不法行為があったと主張する。なお、原告は、債務不履行に関しては、婚約関係を理由とする債務不履行または労働契約を理由とする債務不履行を主張するようである。
(2)被告主張
ア 主張自体失当及び否認
原告は、「プロポーズを断らせる」について独立した請求であると主張するようであるが、これについて何ら損害の主張はなく、そもそも訴訟物として提示されていないか仮に提示されていたとしても主張自体失当である。
なお、「婚約」に関しては上記1で述べたところと同様に、また「労働契約」に関しては上記4で述べたところと同様に、それぞれ具体的な主張もなく、また荒唐無稽の主張である。不法行為についても、その要件のいずれもおよそ認められない。
イ 各種抗弁
被告準備書面(1)で述べたとおりである。
7 「結婚するという度重なる約束」(金額不明)に対して
(1)原告は、債務不履行又は不法行為があったと主張する。
(2)被告主張
ア 主張自体失当及び否認
原告は、「結婚するという度重なる約束」について独立した請求であると主張するようであるが、これについて何ら損害の主張はなく、そもそも訴訟物として提示されていないか仮に提示されたとしても主張自体失当である。
その他上記1で述べたところと同様である。
イ 抗弁各種
被告準備書面(1)で述べたとおりである。
8 「旅行代金の支払い」(金額不明)に対して
(1)原告は、債務不履行又は不法行為があったと主張する。この債務不履行の債務は、労使契約上の債務であるようである(原告準備書面(2)4頁)。
(2)被告主張
ア 主張自体失当及び否認
原告は、「旅行代金の支払い」について独立した請求であると主張するようであるが、これについて何ら損害の主張はなく、そもそも訴訟物として提示されていないか仮に提示されていたとしても主張自体失当である。
その他これまで述べたところと同様である。
イ 抗弁各種
被告準備書面(1)で述べたとおりである。
9 「セクシャルハラスメント」(金額不明)に対して
(1)原告は、債務不履行又は不法行為があったと主張する。この債務不履行の債務は、労使契約上の債務であるようである(原告準備書面(2)4頁)。
(2)被告主張
ア 主張自体失当及び否認
原告は、「セクシャルハラスメント」について独立した請求であると主張するようであるが、これについて何ら具体的行為や損害の主張はなく、そもそも訴訟物として提示されていないか仮に提示されたとしても主張自体失当である。
その他これまで述べたところと同様である。
イ 抗弁各種
被告準備書面(1)で述べたとおりである。
第3 その他
1 原告の本件事務所への入所経緯について
原告と被告とで争いがある事実関係について、客観的資料が残っていたものについて証拠提出する(乙19の1・2)。
これを見れば、原告の本件事務所への入所経緯については、被告は、「平成2(1990)年、原告がニューヨークへの留学が決まり、留学後の就職先として、本件事務所への入所を希望する旨を被告に伝え、被告が本件事務所のパートナー会議にかけた上で、原告の留学後に入所を認める旨のパートナー会議の決定結果を伝えた」と主張し、原告はこれを否認するが(原告準備書面(1)1頁)、被告主張が真実であることは明らかである。
また、このとおり、平成2(1990)年には、原告が留学後に本件事務所に入所することは正式に決まっていたのであるから、原告の留学中の研修先に関する原告の主張(留学後の転職先のA事務所から研修先を紹介してもらうことになっていたから、被告の行為でRogers&Wells法律事務所で研修で来たという被告主張が誤りであるという主張や、ひいては、本件事務所のために留学先の研修を切り上げて早く帰国したなどという主張。原告準備書面(1)1頁及び訴状3頁1・2行目参照)が事実に反することは明らかである。
2 和解に関して
原告は、被告からの1700万円の支払いについて、「被告が支払った理由は不明である」「1700万円の支払いで双方が和解したという事実はない」などと主張するが、仮に和解が成立していないのであれば、法律上の原因なき支払いとなって、原告は被告に対して不当利得によって1700万円及び利息を返還すべき義務を負うこととなる(民法704条)。この場合、原告自身が支払いの理由が不明であるとして、法律上の原因なきことを自認していることになるから、和解が成立していない以上は、被告からの返還請求が認められるべきことは明々白々である。また、もし原告が和解が成立していないとして本件訴訟を継続するのであれば、その前提として1700万円及び利息を返還して初めてその資格が認められるべきものであろう。
ただし、実際には和解契約が成立していることは明らかであるところ(被告準備書面(1)14頁)、原告は、その後の和解契約の債務不履行にあたる行動を重ねている。原告の和解契約の債務不履行により被告が被る損害(本訴にかかわった被告の弁護士費用や、原告が過去あるいは将来においてマスコミへの喧伝をすることにより被告の被る有形無形の損害等も含まれる)については、すべて債務不履行による損害賠償請求の対象となることは言うまでもなく、原告に置かれては、弁護士としての立場も踏まえて、今後の行動をよく自戒されたい。
以上